2001 年 58 巻 2 号 p. 66-72
混合組成比率が約10重量%の結晶性水添スチレンーブタジエンラバー (H-SBR) と約90重量%のアスファルトからなる非水系物理ゲルの力学特性とその制振材への応用について詳細な知見が得られたので報告する. 本ゲルはポリマーとアスファルトが共連続な相分離構造を有している. そのため連続なアスファルト相に由来した大きなTan δを微少変形から大変形に至るまで発現し, 一方, 引張特性はもう1つの連続相のポリマー相に由来するゴム的な応力ーひずみ特性をもち, 大変形になると応力が急上昇する. さらに, ポリマー相がポリエチレン結晶を擬似架橋点として内包しているため, 高温 (80℃) においてもアスファルト相の流動を抑制しており, 優れた熱安定性 (高温下での形状保持性) をもっている. つまり, 本系はまったく異なった性質をもつ2相が相互に連続な構造を形成することによって, 両相が必要な機能を分担した新しい材料である. なお, その粘弾性的性質を利用して優れた制振材となり得ることも実際の振動実験によって確認されている.