高分子論文集
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不斉ラジカル重合
中野 環
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2001 年 58 巻 8 号 p. 411-426

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抄録

メタクリル酸1-フェニルジベンゾスベリル (PDBSMA) およびN-フェニルおよびN-シクロヘキシルマレイミド (PMI, CHMI) のラジカル重合における不斉誘導について検討した. PDBSMAはラジカル重合でもほぼ完全にイソタクチックならせん状ポリマー (左右のらせんの等量混合物) を与える. 本研究では, PDBSMAのラジカル重合を, 光学活性な開始剤 (過酸化物), 連鎖移動剤 (チオール), 溶媒 (アルコール類), あるいは不対電子をもつ添加剤 (コバルト (II) 錯体) を用いて行うことにより, 左右どちらかに偏ったらせん構造をもつ光学活性ポリマーを合成した (らせん選択ラジカル重合). らせん選択は, 成長ラジカルと1次ラジカルとの反応, 連鎖移動剤あるいは溶媒から成長ラジカルへの水素移動, あるいはコバルト錯体と成長ラジカルとの相互作用を通じて起きる. さらに, 少量の光学活性単量体とPDBSMAとの共重合でもらせんの偏りが誘起された. また, PMI, CHMIのラジカル重合を光学活性コバルト (II) 錯体存在下で行ったところ, 光学活性ポリマーが得られた. この重合ではコバルト錯体が生成ポリマーの主鎖のコンフィグレーションに影響し, キラルな (R, R) -あるいは (S, S) -トランス型の単量体単位が過剰に生成したものと考えられる

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© 社団法人 高分子学会
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