高分子論文集
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酸化的カルボニル化反応に基づく-酸化炭素とビスフエノールAからのポリカーボネートへの一段重合
石井 宏寿
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2002 年 59 巻 4 号 p. 137-149

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抄録

代表的なエンジニアリング・プラスチックであるポリカーボネート (PC) は衝撃強度, 耐熱性などに優れた透明材料として広く利用されている有用な材料であり, 主にビスフェノールA (bis-A) とホスゲンとの重縮合により工業的に生産されている. さらなる生産コストの低減とホスゲン使用による潜在的危険性の回避を目的として, Pd触媒存在下一酸化炭素を用いる酸化的カルボニル化反応に基づくビスフェノールAからのポリカーボネート一段合成法の開発を行った. 最初にフェノールから炭酸ジフェニルへの酸化的カルボニル化反応をモデル反応として, 新たにPd錯体触媒系をデザインした結果, 従来の触媒系で大量に必要であったアンモニウムハライドが不要になるPd-Sn錯体触媒系を見いだした. また, アンモニウムハライドは必要ではあるが極めて高活性な触媒としてPd複核錯体, Pd-ジイミン錯体, Pd-ビピリジル錯体触媒系を見いだし, さらにPd錯体触媒系の固定化についても検討した. これらのPd錯体触媒系を目的のビスフェノールAからのポリカーボネート一段合成法に適用したところ, 6, 6'位に置換基を有する2, 2'-ビピリジルを配位子とするPd錯体を用いることにより, 従来の触媒系を用いた場合を大きく上回る数平均分子量5600, 重量平均分子量12900のポリカーボネートを, 高収率で得ることが可能となった.

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