高分子論文集
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高活性ニッケル触媒による環状共役ジエンの位置および立体特異性重合
中野 充臼杵 有光竹中 康将
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2002 年 59 巻 6 号 p. 356-363

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抄録

1, 3-シクロヘキサジエン (CHD) の重合に対し, ビスアリルニッケルプロミド (ANiBr) とメチルアルミノキサン (MAO) からなる2成分触媒が, 極めて高活性であることを見いだした. 特に, oジクロロベンゼンおよびシクロヘキサン中では, 室温で重合はいずれも瞬時に完了し, 88~96%の高取率で白色粉末状のポリマーが得られた. 種々のホウ素化合物にも顕著な共触媒効果があり, 例えば, ANiBrに対しLiB (C6F5) 4を0.2当量加えただけで, 90%を超える重合収率が達成された. 単離したNi錯体との比較から, カチオン性のアリルニッケルが真の重合活性種と推定される. 生成したポリ (CHD) は有機溶媒に不溶不融であったが, 共重合体のNMR解析の結果, 1, 4一結合のみで構成されていることが明らかとなった. さらに, COMPASS Force Fieldを使った分子動力学計算により, シスーシンジオタクチック構造のみが, ポリ (CHD) の実測X線回折パタンを再現できることがわかった. ANiBr以外のNi錯体を検討した結果, 配位子の立体障害がCHDの重合速度, 収率に強い影響を与えることがわかった. 一方, 生成ポリマーの位置/立体構造に大きな変化は認められなかった. 続いて, 1, 3-ブタジエン (BD) との共重合についても詳しく検討した. CHD-BD共重合体は, 30mol%のBD単位が含まれていても結晶性を示し, BD導入量を変えることで, 融点, ガラス転移点が制御できた. また, 1) 共重合反応性はCHDがBDよりも高い, 2) CHD単位増加に連動してBD単位のトランス/シス比が増加する, ことも明らかにした.

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