抄録
本研究の目的は、気候変動により高潮などの影響が懸念される東京湾沿岸地域を対象として、東京湾という場所への愛着と気候変動による被災不安という感情的要因が、地域住民の気候変動の緩和策や適応策への取り組みに与える影響を、インターネットによるアンケート調査をもとに明らかにすることである。このため、東京湾沿岸地域に住む18~69歳までの成人男女を対象としたインターネット調査を実施し、合計864 名から回答を得た。分析の結果、地域愛着が高いほど、また、状態不安が高いほど、対策行動を行っていることが明らかになった。ただし、その影響の大きさについては対策行動により違いがみられた。適応行動や長期的な緩和行動においては、状態不安よりも地域愛着がより強く影響していると考えられる一方、現在的な緩和行動においては、状態不安と地域愛着が同程度に影響していると考えられる。なお,特性不安は対策行動と有意な関連がみられなかった。