九州神経精神医学
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研究と報告
うつ病様症状が初発症状であった血管内大細胞型B 細胞リンパ腫の1例
川原 一洋城野 匡本田 由美横田 周三佐々木 博之牛島 洋景池田 学
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2012 年 58 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

抑うつ,不安といった精神症状が先行した後に,認知機能低下,意識障害がみられ,最終的に血管内大細胞型B 細胞リンパ腫(IVLBCL)と診断した症例を経験した。本例の初発症状は抑うつ,思考力低下で,うつ病として治療されたが改善に乏しく当科へ入院となった。頭部MRI で多発脳梗塞を認め失認を残したが,症状は安定し退院となった。4か月後,不穏,歩行障害,言語障害,構成障害などの多彩な精神神経症状を呈し再入院となった。新たな非典型な多発脳梗塞,血清sIL-2R:3844U/ml の高値,FDG-PET にて副腎に異常集積を認めた。副腎生検の結果,血管内にB 細胞のマーカーを有した異型リンパ球を認め,IVLBCL と診断した。本疾患は多彩な精神神経症状を呈し,精神科を初診する場合もあるが,その背景に非特異的な多発脳梗塞を呈する場合には,早期診断及び治療が重要なため,本疾患を鑑別診断に挙げる必要がある。

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© 2012 九州精神神経学会
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