九州神経精神医学
Online ISSN : 2187-5200
Print ISSN : 0023-6144
ISSN-L : 0023-6144
研究と報告
減薬と口腔ケアが肺炎および肺化膿症の治療に寄与した統合失調症の一例
吉田 佳奈香田 将英宮原 裕船橋 英樹石田 康
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 68 巻 1 号 p. 9-14

詳細
抄録

 統合失調症では,複合的な要因で嚥下障害を呈することがあり,適切な対処が求められる。今回,減薬と口腔ケアが肺炎および肺化膿症の治療に寄与した統合失調症の一例を報告する。症例は破瓜型統合失調症の35歳女性。支離滅裂で衝動的な行動が目立ち,単科精神科病院に長期入院していた。肺炎を繰り返すようになり,精査目的で当科へ転院後,肺化膿症と診断された。抗菌薬治療と併せて,向精神薬の調整や口腔ケアを行った。全身状態が改善するにつれて,精神状態が安定し意味のある発語も見られるようになり,入院第59病日に紹介元へ転院した。統合失調症の症状そのものだけでなく,向精神薬や口腔衛生状態の悪化が誤嚥や肺炎の原因となりうる。肺炎を繰り返す統合失調症患者では,薬剤や口腔環境を改めて評価し,包括的に対応することが重要である。

著者関連情報
© 2022 九州精神神経学会
前の記事
feedback
Top