九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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病院所有の車椅子調査から
車椅子の劣化箇所
*橋口 貴大
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キーワード: 車椅子, 調査, 劣化
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p. 158

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抄録
【はじめに】
車椅子は病院で汎用される医療福祉用具であるが、ヒヤリハットの報告の多い機器でもある1)。当院では車椅子の総括的な管理体制は無く、車椅子の整備不良等に関しては我々療法士や病棟スタッフが日常業務の中で発見したり、患者様に指摘され気付くことが多い。今回、当院所有の全ての車椅子の調査をおこなった。その結果をもとに整備不良や破損・劣化を起こしやすい箇所を指摘し、今後の課題として提案する。
【調査方法】
平成16年12月22日から翌年1月14日の車椅子を使用度の低い時間帯に療法士が調査した。各車椅子は、次の11項目について調査・点検した。(1)タイプ、(2)サイズ、(3)背シート、(4)リクライニング、(5)ブレーキ、(6)アームサポート、(7)レッグ、(8)介助用ブレーキ、(9)ハンドリム、(10)その他、(11)修理の必要性・箇所
【調査結果】
当院所有の全ての自走式車椅子は総数212台。うち修理・調整の必要なものが137台。介助式車椅子総数13台。うち7台が修理・調整必要。なお、必要な修理・調整の内訳は以下の通りであった。
空気圧不良41件、タイヤ磨耗・劣化41件、ブレーキ不具合35件、フットプレート故障・キャップ紛失14件、パンク7件、シート弛み5件、ブレーキ部分の破損・紛失・劣化5件、レッグレスト開閉不良2件、空気漏れ防止キャップ紛失34件、キャスター破損3件、アームレスト劣化2件、車軸ずれ2件。
【考察】
今回の調査から、病院所有の車椅子で整備不良や破損・劣化を起こしやすい箇所は、タイヤの空気圧、タイヤの磨耗、ブレーキの不具合等であり、タイヤの磨耗・劣化件数と空気圧不良件数は同数であったが相関関係は認められなかった。また、シートの修理を要する車椅子は、シートのサイズ400mmが3台、420mmが2台であった。それら全てリクライニング不可であり、背シート固定であった。ブレーキ修理を要したのはタックル32件、レバー8件であり、これらの構造とシートの弛みとの関係は認められなかった。また、多機能型車椅子は整備不良や破損・劣化を起こしやすいのではないかとの予測に反し、本調査では他種との間に有意差はみられなかった。
今回は、自走式、介助式それぞれの破損や劣化しやすい箇所の要因については特定するまでには至らなかった。これは病院所有の車椅子の特徴として、その1台を様々な利用者が乗り回しているためと推測される。
今後、車椅子購入からの期間を解析の中に組み入れ、破損・劣化等起こりやすい箇所及びその要因を検証したい。
【まとめ】
・病院所有の車椅子で整備不良や破損・劣化を起こしやすい箇所は、タイヤの空気圧、タイヤの磨耗、ブレーキの不具合等であった。
・車椅子の機能的構造と整備不良等の箇所に相関は認められなかった。
・今後、車椅子購入からの期間を解析の中に組み入れ、破損・劣化等起こりやすい箇所及びその要因を検証したい。
【参考文献】
1)吉田隆幸 OTジャーナル36(6):538-541,2002
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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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