九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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創外固定器使用例の橈骨遠位端骨折に対するセラピィ
*山田 玄太田崎  和幸野中 信宏坂本 竜弥栄 美乃貝田 英二
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p. 20

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抄録
【はじめに】
橈骨遠位端骨折は臨床で最もよく遭遇する骨折である。今回、初期治療で創外固定器(On-bridge type)を用いた症例のセラピィを『固定期』『固定除去期』『骨癒合期』の3つの時期に分けて行い良好な成績を得たので、その治療プログラムを紹介する。
【対象】
過去3年間で当科に依頼された橈骨遠位端骨折138例中、初期治療で創外固定器を用いて2週間以上可動域改善のないプラトー状態までセラピィを施行した54例を対象とした。そのうち31例がKirschner鋼線による経皮的内固定を併用した。内訳は男7例、女47例、28から94歳(平均65.0歳)で、受傷原因は転倒37例、転落15例、交通事故2例であった。colles骨折52例、smith骨折2例で、外固定期間は4から6週(平均4.7週)であった。
【OTプログラム】
『固定期』では、術後翌日から患手挙上位、肩・肘・指関節の積極的な自他動運動で、浮腫・拘縮を予防した。特に指関節の運動は、骨折部での指屈筋腱・伸筋腱の癒着、創外固定ピン注入部である第2中手骨部での伸筋腱の癒着予防が重要である。やむなく発生した癒着に対してはrubber band traction、着脱式スプリントで矯正した。『固定除去期』では、wrist rounder exを手関節可動域に応じて段階付けて行った。また、橈骨手根関節を長軸方向に牽引して骨折部への負荷を軽減した上での徒手的な手関節他動運動と指屈筋腱伸筋腱の伸張運動を行った。前腕回旋運動を開始し、当院独自の手関節他動尺屈位での回外運動を行った。『骨癒合期』では、ADLでの積極的な患手使用と、手関節掌背屈板、動的回内外スプリント、Weight pulling exなどの治療器具を用いてさらなる可動域、筋力の向上をはかった。また、強固な骨癒合が得られたのちCompression exを行った。
【結果】
抜釘後からプラトー状態まで4から32週(平均7.1週)であった。最終平均自動可動域は、掌屈50.3度、背屈53.2度、回外84.9度、回内72.4度で、握力は健側比率47%であった。骨アライメント評価では、整復時と最終時を比較してRadial inclination平均+0.9度、volar tilt平均-0.2度、Ulna variance平均+1.0mmの差があった。
【考察】
橈骨遠位端骨折は、前腕回旋・手関節可動域制限は無論、骨折部での指屈筋腱・伸筋腱の癒着、運動不足による肩・肘・指関節の拘縮、さらには創外固定器使用例では、特有である第2中手骨部での伸筋腱の癒着が発生し易い。我々は創外固定器使用例の病態を把握し、3つの時期に大別してタイムリーなセラピィを施行した。それにより最も強固な拘縮が生じる前腕・手関節に対して集中的にセラピィを行えたことが、良好な成績獲得に繋がったと考えられる。すなわち、固定除去期前に前腕・手関節以外の拘縮をいかに予防・改善しておくかが治療成績向上のポイントといえる。
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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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