九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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英国における健康概念の理論と実際
英国マーストン・ケアハウスを訪ねて
*加藤 剛平藤村 昌彦
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p. 7

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抄録

【目的】英国のマーストン・ケアハウスを訪問し、医療・福祉サービスを提供する際に有益と思われる知見を得たので報告する。
【方法】第一に施設を見学し、職員に対し、医療・福祉サービスを提供する際の理念に関してのインタビューを行った。第二にインタビューから得られた情報を考察するために、文献や資料から情報の収集を試みた。
【結果】第一にインタビュー・文献考察により、英国においてかつてから医療・福祉サービスの間には深い隔たりが存在し、そのため病院などの医療機関とケアハウスなどの福祉施設の間にも隔たりが生じ、サービス受給者に不利益が生じていたことが問題となったことが確認された。加えて、この隔たりを理解するために、主に二つの“健康”を捉える概念モデルを認識することの必要性が見いだされた。具体的には医療モデルと社会モデルにおける健康概念が存在した。英国においては医療・福祉機関の間における役割分担を認めつつ、お互いのサービスの協働を促進する取り組みが社会政策により後押しされた。マーストン・ケアハウスにおいては、施設見学、インタビューにより、具体的なサービス内容の確認を行うことができた。マーストン・ケアハウスにおいては医療モデルの健康概念を取り入れ医療機関との連携をはかりつつ、主に社会モデルにおける健康概念によりサービスの提供を行っていることが理解された。最後に、英国において、医療・社会モデルの橋渡し役を主に作業療法士が担っていることが判明した。
【結論】英国マーストン・ケアハウスを見学し、インタビューを職員に行うことで以下述べる4つの有益な情報及び経験を得ることができた。第一に英国において、医療・福祉サービス提供機関間に隔たりが存在し、それが問題となり議論されていること。第二に、英国ではこの問題に取り組むため医療・社会モデルの健康概念の存在を理解し、融合することを理念として捉えていること。第三に、マーストン・ケアハウスにおける具体的なサービス提供の実際を確認できたこと。第四に医療・福祉サービス提供に際して専門職者の主な役割を理解したこと。

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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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