抄録
【目的】理学療法士・作業療法士の教育において、専門的知識の習得のみでなく、医療人としての人間性・社会性という職業への適正も重要な因子である。医療の臨床場面や教育現場での対人関係を円滑にする方法として、交流分析が活用されている。エゴグラムは自我状態の機能分析をグラフ化したものであり、そのパターンより自己の性格特性や行動パターンの特徴を理解するものである。昨今の教育現場では、学生数の急激な増加に伴い幅広い性格を有する学生への対応が求められている。今回、オーバーラップ・エゴグラムを活用し、他者との相性関係を求めることを目的とした。【エゴグラムとは】交流分析の基本となるもので、人のパーソナリティーの自我状態(親、大人、子供)を、CP(批判的な親)・NP(養育的な親)・A(大人の自我)・FC(自由な子)・AC(順応した子)の5つに分け、この尺度高低(優位、劣位)のパターン分類より性格を解釈する方法である。オーバーラップ・エゴグラムとは、二者間(自分と相手)のエゴグラムを上下反対方向より重ね合わせ、相手との相性関係を求めるものである。【対象及び解析方法】対象は、平成16年・17年に入学した新入生173名(PT:85名、OT:88名、男性96名、女性77名)である。入学初期にTEGを実施し、各学生の性格を分析した。演者は平成二年より自作のソフトを用いTEGを分析しており、今回新たにオーバーラップ・エゴグラム解析用ソフトを作成した。【結果及び結論】本校の特徴として、各学科の教員は入学早期に全入学生の人間性を知ることを基本としている。その一助として、個人的にTEGを活用してきた。今回、オーバーラップ・エゴグラムの存在を知り、早速ソフト化することで問題点を模索してみた。演者のTEGは、CP(10点)、NP(20点)、A(19点)、FC(6点)、AC(3点)というNPとAが特に高い台形型(ボランティア・タイプ)である。このタイプにとって、コミュニケーションの取りにくいパターンとしては、NP・A・FCが低いV字型(イライラタイプ、空想家タイプ、忍の一字タイプ)やU字型(フラストレーションタイプ、爆発タイプ、いじけやすいタイプ)が挙げられる。これらのタイプの出現率は、V字型が10.1%、U字型が4.4%と低い数値ではあるが、オーバーラップ・エゴグラムにおいても重なりの少ないタイプであり、教育場面での相性関係の難しさを感じている。エゴグラムの創始者であるデユセイは、「人間関係を維持するには最低2つの自我状態の重なりが必要である」と述べている。これらの学生との対人関係において、相手に変化を求めるのではなく、TEG上での重なりを増す方向での接し方(学生指導)を検討すべきである。