九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 205
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自己投影型ゲームが身体・精神機能に及ぼす影響(第3報)
運動機能、精神機能向上プログラムの支援ソフトの開発を通して
*山口 健一久保田 奈穂子許山 勝弘久保 沙織日高 健二野上 千寿
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抄録
【はじめに】
医療介護サービスにおけるプログラムでは、近年業務用ゲーム機や家庭用テレビゲーム等を利用した報告がなされその成果についても実証されている。我われは、トヨタ自動車九州株式会社と共同で、自己投影型ゲームのソフトであるコンピュータソフト「CarePa」キャリパ(以下キャリパ)の研究・開発を行った。キャリパを開発する上で、まず介護保険下における通所系サービスを受ける方を対象者として想定した。理解しやすい内容であることやゲームそのものの達成感だけでなく、その場で効果が確かめられるよう評価測定機能を付与することを目標とした。さらにキャリパの特徴から、身体イメージと運動が結びつきやすいことが考えられ、その効果についても検証を行った。今回、キャリパに付与を予定している評価ソフトについての実証作業を合わせて行ったので以下に報告する。なお研究に際して当院医療倫理委員会の承認を得ている。
【目的】
自己投影型ゲームの身体・精神機能に及ぼす影響から効果の高い要素を検証し、評価ソフトに反映させることとした。
【対象】
当法人医療介護サービス利用者23名(男性8名、女性15名、平均80,6歳±6,5)及び健常者13名((男性5名、女性8名、平均24,3±1,0)
【使用ソフト及びハードの説明】
キャリパは、従来のコントローラーを使用したゲームと異なり、画面に映し出された自分自身の動作によってゲームが展開される。プロジェクターを用い自己像が等身大となるよう設定しゲーム及びその評価測定機能を使いソフトの検証を行った。
【方法】
ゲームの前後で、ゲームのスコアやファンクショナルリーチテストと画面上で行うリーチテスト、関節可動域テスト(徒手的に行うもの)と画面上で行うROMテスト、落下棒テストと画面上で行う反応テストをそれぞれ行い、その比較から差異を修正しソフトの仕様変更やテスト方法の手順書を作成し、測定評価機能の再現性や正確性を検証した。
【結果】
我われが、作成した測定評価プログラムと実際に実施したテストとの間で相関を得られたことから、ゲームの効果として有用であることが実証された。
【考察とまとめ】
第1報(第15回福岡県作業療法士学会)では、ゲームに求められる、運動機能要素と精神機能要素を分解し、上肢機能やバランス能力、スピードやタイミング、注意機能、視覚機能、また精神面に対する影響を分析しゲームの要素に反映させた。第2報(第44回日本作業療法学会)では、実際に対象者に対してゲームを行ってもらい、前後でのその効果検証を報告した。キャリパを作成していく上で、高次脳機能障害や高齢者の特性をイメージし、コントラストや色合いなど注意を向けやすいキャラクターなど多くの項目を検討した。全てのゲームで、積極的な身体運動やバランスなど活動性の向上につながる要素が多く盛り込むことができた。今後も多くの意見を取り入れ発展させていきたいと考える。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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