九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 209
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膝前十字靱帯再建術後の伸展可動域獲得に影響を与える因子について
*西川 雄二饗庭 甲人北島 正透武田 寧今屋 健
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キーワード: ACL, 伸展可動域, 関節弛緩性
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抄録
【はじめに】
膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後における可動域獲得は、術後の「機能的な膝」の獲得に極めて重要である。特に伸展可動域は筋力の回復、スポーツ復帰にも影響を与えると報告されている。しかし、臨床では完全伸展の獲得に苦労するケースも多い。先行研究では伸展可動域獲得に影響する因子として、術前可動域、関節弛緩性などが報告されている。そこで今回、(1)性別(2)年齢(3)術前の伸展可動域(4)非術側の膝の弛緩性の4因子と術後の伸展可動域との関係性について調査した。
【対象と方法】
対象はH18年3月からH21年7月に当クリニックで一側のACL再建術(STG)を行い非術側に靱帯損傷などの既往がない107例(男性55例、女性52例)である。対象者には調査の主旨を説明し同意を得た。伸展可動域は術前と術後平均8ヶ月にHeel height difference(以下HHD)にて測定した。HHDにて1横指未満の伸展良好群(以下良好群)と1横指以上の伸展不良群(以下不良群)に分けて検討した。年齢は各年代(10才台、20才台、30才台、40才以降)に分類し比較した。膝の弛緩性(以下AD)は、KneeLax3(index社)にて132Nでの前方引き出し距離を測定した。
【結果】
(1)性別:不良群の内訳は、男性23例(41.8%)、女性27例(51.9%)だった。術後の伸展制限例を各年代で男女別にみると、有意差はないもの女性に多い傾向があった。(2)平均年齢:不良群が27.4±11.0才、良好群が23.6±9.5才で、年代別比較では伸展制限例は40才台、30才台、10才台、20才台の順に多かった。20才台とその他の年代に有意差を認めた。(3)術前伸展制限:不良群が有意に大きかった。(4)非術側の緩み:不良群は、男性で有意差はないが緩みが小さい傾向で、女性で有意に大きかった。
【考察】
我々は臨床経験から術後の伸展制限の因子に、女性、年齢が高い、術前の伸展制限、非術側の緩みが小さいなどを予想した。統計学有意差を認めたのは術前伸展可動域のみであった。また不良群は女性が多かったが、反張膝の影響が示唆された。年齢が高くなるほど伸展不良傾向にあったが、年齢別に不良例の占める割合をみると10才台、20才台では41.7%、31.8%で、30才台、40才台では68%、58.3%であり、年齢が高くなると不良例の割合が増加し、年齢の因子の影響もあると考えた。また不良群で20才台よりも10才台に多い原因として、術前に完全伸展がとれていないことが示唆され、学校の休みなどの関係にて手術日を決めることには慎重であるべきと考えた。
【おわりに】
伸展不良例を検討した。術前の状態が術後の伸展可動域に影響することが確認された。年齢因子の関与も示唆されたが、リハビリ頻度など具体的な因子も考慮して今後検討を進めるべきと考えた。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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