九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 216
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筋ジストロフィー患者における下肢近位筋力及び体幹筋力と座位保持能力との関連性の検討
*稲富 真理恵足立 仁志竹下 明伸石井 美里川崎 沙織荒畑 創
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抄録
【はじめに】
筋ジストロフィー患者において、自力座位保持が困難になる目安を明らかにすることは臨床上有益と考えられるが、このような研究報告は少ない。
患者の多くは四肢近位筋より筋力低下を生じることから、徒手筋力検査法(以下MMTと略)から得られた下肢近位筋及び体幹筋の筋力スコアーと座位保持能力との関連性について検討した。
【対象】
2008年4月から2010年3月の間に当院で短期入院をした筋ジストロフィー患者32名(デュシェンヌ型22名、ベッカー型5名、筋強直型5名)、年齢は21.7±14.7歳、機能障害度はstage1~4が16名、5~6が3名、7が7名、8が6名である。
【方法】
(1)MMT:ダニエルズらの徒手筋力検査法を用い、股関節屈曲・伸展・外転・内転、膝関節屈曲・伸展、体幹屈曲・伸展筋力を0~5のスコアーとして点数化、下肢の代表値は左右の平均値とした。(2)座位バランス評価:浅野らの基本動作検査表の5段階評価を用い、0~4のスコアーとして点数化。(3)機能障害度:厚生労働省研究班の新分類を用い、1~8のスコアーとして点数化。各項目との関係を調べた。また、自力座位保持能力の程度をみていくため対象者を3群化〔座位バランスレベル4及び3をA群(動的座位可能群)、2及び1をB群(静的座位可能群)、0をC群(座位保持不可能群) 〕し、MMT及び機能障害度との関係について検討した。統計解析はSpearman順位相関とKruskal Wallis検定にて、有意水準は5%未満とした。
本研究は診療目的で測定された結果のみを用い、測定は同意を得た後に実施した。
【結果】
筋力と座位保持能力の関係は評価対象の筋力全てに有意な正の相関が認められ体幹筋よりも下肢近位筋、特に股関節外転筋は最も相関が高かかった(r=0.88,p<0.001)。座位保持能力と機能障害度では有意な負の相関が認められた(r=-0.90,p<0.001)。3群の機能障害度及び筋力について比較検討した結果、平均機能障害度はA群2.5±1.9(n=19)、B群6.5±1.2(n=6)、C群7.9±0.4(n=7)となり、有意差が認められた(p<0.001)。下肢近位筋の平均筋力はA群3.2±1.3、B群1.8±0.6、C群0.4±0.5であった(p<0.001)。
【考察】
下肢近位筋、特に股関節外転筋の筋力スコアーが座位保持能力の評価に反映されることが示唆された。また下肢近位筋のMMTがおよそ2であると動的座位能力が低下し自力座位保持が難しくなることが予想され、車椅子等の検討において有益な情報になると考えられた。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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