九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 267
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リハビリテーション患者データバンク(DB)大腿骨頚部骨折データを用いた、回復期入院例における在宅復帰並びに作業療法に関する解析
*山本 政昭高木 治雄一ノ瀬 拓朗井手 晴美下村 理香金子 翼
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抄録

【目的】
リハビリテーション患者データバンク(以下DBと略す)の開発は、リハ医学のエビデンスづくりを進める事を目的とし、厚生労働省科研事業として平成17から21年にかけて行われ、当院もこの研究にデータを提供してきた。このうち大腿骨頚部骨折DBに登録されたデータについて、回復期入院例における在宅復帰並びに作業療法に関する解析を行ったので報告する。
【方法】
厚生労働科研費「リハビリテーション患者DB研究班」大腿骨骨折WG作成のソフト並びにデータを用いた。データは匿名化されている。国内7医療施設から提供された152例の大腿骨頚部骨折患者データのうち、回復期病棟入院患者は84名であった。このうちFIM項目が不十分であった例を除いた69例を解析の対象とした。入力された145項目について、在宅退院例と施設退転院例に分け2変量解析を行った。有意水準はいずれも p<0.05とした。統計ソフトはSPSS(Ver.17)を用いた。また、作業療法介入の指標を策定し、関与する項目を調べた。
【結果】
A)背景:性別は男性7名、女性62名、年齢は平均83.2、±8.9歳、平均在院日数は66.1±23.2日だった。
B)在宅復帰しなかった例で有意であった項目1)入院前状態:発症前居所が自宅以外、合併症がある、既往がある、介護力が低い 2)入院中状態:入院時FIM認知項目点数が低い(理解、表出)、退院時FIM認知項目点数が低い(理解、表出、問題解決、記憶)、退院時FIM運動項目点数が低い(シャワー、更衣下半身、トイレ動作、ベッド車椅子、トイレ、歩行車椅子、階段、移動屋内)、退院時合併症がある。
C)作業療法介入:OT介入度=(OT/PT単位比)×(一日あたり合計リハ単位数)とし、カテゴリー化した。OT介入度が有意に高かった項目1)背景:受傷前の自立度が低い2)入院中の状態:FIM入院中排便管理点数が低い、下肢筋力が弱い、FIM退院時清拭点数が低い、退院時移動能力屋内が低い、バランス能力障害がある3)治療訓練:カンファランスが行われている、日曜日の訓練が行われている、祝日の訓練が行われている、病棟スタッフ訓練が行われている
【考察】
日本作業療法士協会は2007年、大腿骨頚部骨折の作業療法実施手順書を作成し、予防期・急性期・回復期・維持期などに分けて具体的な方法を示している。今回の解析では、在宅への退院には移動能力の改善に加えて、認知面や更衣・排泄動作などの項目が関与することが裏付けられた。OT介入は休日の訓練量に関わるが、認知面に問題がある例への積極的な介入はみられなかった。
【まとめ】
DBを用いて大腿骨頚部骨折例の在宅復帰並びに作業療法に関する解析を行った。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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