九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 288
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鹿児島市における転倒骨折予防教室アンケート調査
        ―教室参加者の現状から―
*中村 裕樹出水 孝明佐田 直哉永留 篤男斉野 仁下久保 良一八反丸 健二(MD)坂本 一路村山 芳博赤崎 昭朗梅本 昭英
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抄録

【はじめに】
 転倒は、在宅の高齢者の約20%が経験しているといわれ、さらに転倒が原因で生じる社会的損失が、大きな問題となっている。その為、在宅高齢者の為の健康教室や介護予防事業が各地域で開催されている。鹿児島市でも鹿児島県理学療法士協会が、市よりの委託事業として転倒骨折予防教室(以下、教室)を年間約240ヶ所実施しており、予防の重要性に着目して教室を展開している。昨年県学会において一部地域での教室参加者を対象に生活環境状況についてのアンケートを行い報告した。今回その調査範囲を市全体に拡げて調査を行ったので報告する。
【対象および方法】
 平成21年度に鹿児島市内で開催された教室のうち、無作為に選定した教室の参加者1155名を対象に無記名方式でアンケート調査した。調査の際には、趣旨を説明し同意を得て実施した。
 質問項目は7項目で、健康・生活(6問)、食事・嗜好(6問)、薬・体調(4問)、地域(3問)、歩行・転倒(7問)、疼痛(3問)、教室(4問)の計33問であった。回答は、選択回答法(複数回答を含む)としてアンケートより得られた結果を各設問別に集計した。さらに性別と転倒の有無についてはχ2検定を用い検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果及び考察】
 参加者は女性86.4%・男性14.5%であり、今後男性参加者の拡大が課題となっていた。年齢は70及び80歳代がそれぞれ48%・31%で多くを占め、男女別でも同様であった。歩行に不安を抱えている方は35.4%となり、階段については43.9%と多くなっていた。さらに家の中で転ばない工夫をしているかの問いに「している」61.1%と男女別にも関連があった。関節の傷害や疼痛については「ある」57.8%・「ない」35.9%で、男女別にも関連があった。部位別では、膝41.1%・腰32.8%・肩12.7%が大半を占めていた。
 一年以内の転倒経験では「ある」14.8%であり、発生場所として屋内・外では「屋内」6.7%・「屋外」12.9%であった。転倒経験群(以下、経験群)は、男性13.1%で女性が84.1%であり、転倒非経験群(以下、非経験群)に対し健康や歩行に不安を抱いている方が多く、関節の障害がある方が非経験群56%だったのに対し経験群74.9%であった。また、「ある」と回答された方の41.2%がADLに影響があると答えていた。村上によると高齢者の転倒は、中年期からの身体活動の質と量、生活習慣の長い積み重ねが最大の原因であり、適切な運動・生活指導および教育により、身体機能を活性化させる事が転倒の予防に重要と述べている。数年前より教室を継続しているが前回の指導による予防の習慣については63.7%が出来ていると回答があり徐々に浸透していると考える。運動の習慣化については身体活動の意識や向上へ向けた専門的なアプローチが必要と考えられた。

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