九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 314
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「長期臨床実習における義肢装具に関わる状況」
~理学療法学科学生のアンケート結果から~
*立津 統天願 博敦砂川 昌信
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キーワード: 義肢装具, 臨床実習, 教育
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抄録

【はじめに】
いわずと、義肢装具学は、理学療法の治療手技の一つである。2009年版脳卒中ガイドラインでは、「脳卒中片麻痺患者に、歩行改善のために短下肢装具が勧められる(グレードB)」とされており、歩行能力を改善させる有力な治療要素となっている。
このような中、学生の臨床実習中に関わる義肢装具の頻度を知り、臨床実習や学内講義に活かすことを目的として調査を行った。
【対象と方法】
 昨年度に臨床実習を行った理学療法学科学生76名対して、義肢装具に対するアンケートを実施した。 アンケート内容は、「実習中に義肢装具の質問を受けたか」「義肢装具に関することで困ったことはあったか」「義肢装具に関わったか」を1.たくさんあった。2.多少あった。3.まったくなかった。の選択肢を設け、その内容について記入させた。義肢装具に対する自由記入欄も取り入れ集計した。
【結 果】
1.義肢装具の質問を沢山受けた2名(2.6%)、多少受けた39名(51.3%)、まったくなかった35名46.1%)、具体的質問内容は、装具の名称・特徴・構造が16で最も多かった。
2.義肢装具に関して沢山困った5名(6.5%)、多少困った24名(31.6%)、まったく困らなかった47名(61.8%)、具体的に困った内容は、装具の装着手順・方法が多かった。
3.義肢装具に沢山関わった7名(9.2%)、多少関わった20名(26.3%)、まったく関わらなかった49名(64.5%)、関わった装具で多かったのは下肢装具7、であった。
4.義肢装具に対する自由意見欄で最も多かったのは義肢装具学に対する必要性理解の項目16であった。
【考 察】
今回のアンケート結果では、臨床実習で義肢装具に関わった者は少なく、限られた臨床実習の中では、義肢装具の作製、あるいは使用した症例の十分な関わりは得られにくい事が確認できた。
臨床実習では、各施設形態によって疾病構造が違うこと、実習時期のタイミング、症状、素材やアライメント、症例の履き心地、生活環境、経済状況などにも広く評価が及び全体像を理解させるための時間や手順が必要な事も考えられる。
 しかしながら、様々な疾患の運動療法を語る中で義肢装具の治療法は必要不可欠であり、臨床実習の中においても症例を治療する手段としての義肢装具の視点は重要であると思われる。
 また、高木らは、学生が義肢装具の一連の流れを経験・学習する機会が非常に少なく、卒後90%が不安と感じていることを報告している。
今回のアンケート結果においても、義肢装具で困ったことは、経験が求められる内容、義肢装具に対する自由欄では義肢装具の重要性理解に関する回答、義肢装具に対する要望や意見などが多かった。
このことからも学生は義肢装具のニーズをある程度知りつつある段階であり、臨床的な視点に立った臨床実習と学内講義での指導、経験が卒後の不安材料を拭う一つであると思われる。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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