九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 143
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住宅改修後の使用状況と今後の展望について
ー転倒歴・活動度による分類を試みてー
*黒木 博和田上 茂雄柚木 直也
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キーワード: 住宅改修, 転倒歴, 活動度
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抄録

【目的】
住宅改修とは利用者の生活障害を改善する為のアプローチの1つであり、住環境をより適切な環境に変化させ、障害予防、自立支援及び、身体機能の向上までと、様々な効果が期待できる支援技術と定義されている、しかし、退院後の生活では、転倒、能力低下が起きているのが現状であり、実施された改修が妥当であったかと懸念される。
そこで、今回は、住宅改修後の使用状況と今後の展望について、考察を加え明らかにすることを目的とした。
【対象・方法】
対象は、当院退院時に住宅改修を実施した男性15名、女性10名の計25名を対象とした。平均年齢73±11.8歳。なお、対象者には、本研究の主旨・目的を口頭にて説明し、同意を得た。
調査項目は、1.転倒の有無、住宅改修場所数と使用頻度 2.活動度として、厚生労働省が定めている障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)、以上3項目を面接調査法・電話調査法にて聴収した。使用状況は、3:必ず使う  2:時々使う 1:使っていないの3段階、寝たきり度は8(J1)から1(C1)の8段階と区分し、数値化した。転倒経験の有無により、有:A、無:Bの2群に分類。さらに、A、B群を寝たきり度7以上、6以下のA1、A2群、B1、B2群に分類。統計処理として、4群間の改修場所数と改修場所の使用頻度との相関関係についてピアソンの相関係数を用いて調べた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
A1群r=0.77、A2群r=0.94(P<0.01)、B1群r=0.56、B2群r=0.94(P<0.01)であり、A2とB2群において有意な相関を認めた。
【考察】
結果より、活動度の低いA2、B2の2群に相関が見られた。両群共に改修場所数に関わらず使用しており、B2群においては、改修に対する適切な情報提供を行え、患者能力に見合った改修が行われたと考えられ、改修場所の適切な使用により、転倒の回避が出来たと示唆される。しかし、A2群の転倒については、7名中6名が未改修場所で転倒しており、退院後の活動能力の変移や、能力と改修機材との不一致等が考えられる。
活動度が高いA1、B1群には相関が得られなかった。この理由として、改修場所以外での活動度も高い為、広範囲での活動が見受けられ、各個人の身体機能や住環境によって改修場所や使用頻度にばらつきが生じたものと考えられる。
【まとめ】
本研究では、住宅改修後の改修場所数と使用頻度のアンケートによる調査を実施。転倒歴と活動度による分類を行い、各群に対する相関関係を調べ、活動度の低い群が適切な改修を行えていると示唆された。しかし、転倒が起きているのも現状である。今後は、改修後の使用状況や身体機能・能力面などの定期的な評価の実施や長期的な予後予測を踏まえたエビデンスのある住宅改修を課題として取り組んでいきたいと考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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