2016 年 28 巻 2 号 p. 101
頭頸部癌患者に対する摂食嚥下リハビリテーションにはいくつかの特徴がある.まず,手術侵襲による器質的変化や放射線の照射野が明確であることから,摂食嚥下障害の様相や重症度がある程度予測できることがあげられる.例えば,舌癌の術後では食塊の保持・形成・移送が困難になることが多い.放射線治療では唾液分泌量の低下,味覚障害,粘膜炎による疼痛などの急性期障害により,臓器は温存されていても食事摂取が困難になることもある.また照射による感覚低下から気道防御反射が減弱し誤嚥することもある.このように治療法により障害が予測できるので,それに即したリハビリテーションを準備し実施することができる.
次に,患者の自助努力による症状の改善が期待できることがあげられる.すなわち,医療者の適切な指導と説明により,患者や家族による自主トレーニングの実施が可能となる.脳血管障害の摂食嚥下リハビリテーションでは患者の認知機能の低下により自主トレーニングが困難な場合があるが,頭頸部癌患者の認知機能は概ね保たれており,治療やリハビリテーションに理解と意欲を持って取り組める方が比較的多い.その特徴を活かして,医療者とのリハビリ場面以外でも患者が訓練を実施したり誤嚥予防方法を習得したりすることができる.
さらに,各患者により摂食嚥下リハビリテーションのゴールが異なることがあげられる.たとえば舌亜全摘術においても,切除範囲,再建状況,術前後の治療,年齢,性格,生活背景により目標とする食形態が変わってくる.もちろん,治療による器質的・機能的変化に由来する限界はあるが,舌亜全摘術はペースト食がゴール,と一概に決められるものではない.医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士・薬剤師などの各職種がチームとなって連携しながら,個別性のあるリハビリテーションを行う姿勢が大切である.