エル・エス・ティ学会誌
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強誘電性液晶素子の中間調制御
木村 宗弘
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1991 年 3 巻 4 号 p. 129-130

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抄録

強誘電性液晶素子(FLCD)は,従来のTN型液晶素子と比較して,(1)応答速度が高速(TNの約1000倍)(2)光学的メモリー性を有するため駆動するためのTFT(薄膜トランジスタ)が不要(3)視野角が広い(4)TFTのような微細加工が不要等の特徴を有する。しかし,これまでの技術では良好なメモリ性と高速応答性を有する,欠陥の無い大面積のFLCDパネルを作製することは非常に困難であった。また,高精細化のために必要な階調を表示することが困難であった。これはいまだに優れた液晶分子配向技術が確立されていないためであり, FLCがもつ本来の優れた特性が発揮されていないのが現状である。今回,液晶分子配向膜としてポリイミドLan-gmuir-Blodgett膜(LB膜)を用いた強誘電性液晶セルを作製し,このFLCセルにおいてメモリー率100%の完全な双安定メモリー性が発現し,更に中間調(階調)表示能力を有することを確認した。またこのFLCセルに外部半導体を付加する事によって中間調を良好に制御することに成功した。また従来のポリイミドラビング配向膜においてメモリー性が劣化する原因は内部反電界であることを確認した。強誘電性液晶は分子自身が自発分極を持っており,駆動によるスイッチングによって内部反転電界が発生する。ポリイミドラビング配向膜は電気的に絶縁性であり,この反転電界が中和されず,この反電界によってメモリー性が乱されてしまう。これに対してポリイミドLB配向膜は,電気的に適度な導電性があるため,この反転電界は外部回路を通じて中和されるためメモリー性の劣化は起こらない。また,このLB配向膜―FLCセルに外部半導体を付加することによって, FLCへの印加電圧を制御することによリメモリー率100%~0%までの中間調を表することが可能である。この研究結果から,中間調を良好に制御することができるFLCDのアクティブマトリクス駆動も可能である。また,このFLCDは,光ニューロコンピューターや光トランジスターへの応用も可能であり,現在当研究室においても更に研究が進められ,発表されている。

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