抄録
モデルは現実世界の現象に対する我々の科学的理解に大きく貢献している。我々は現実世界を理想化し、現実世界のある要素を無視したり、改変したりすることでモデルを構築する。この意味で、理想化されたモデルは世界の誤った表象である。すると直ちに次のような問いが生じる。理想化されたモデルはいかにして現象の科学的理解を提供することができるのか?本論はこの問いに答えるために、StrevensやPotochnikらの議論を批判的に検討しつつ、彼らの議論の困難を克服するためにモデルのintelligibilityという概念を導入する。その上で、従来の理想化の捉え方に代わる、適切な理想化の捉え方を提示し、モデルを通じた現象の科学的理解がいかにして成立するのかを考察していく。