日本物流学会誌
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経営・産業の今日的課題にたいするロジスティクスと関連諸科学の対応
牧田 行雄
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1995 年 1995 巻 4 号 p. 63-81

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抄録

今日、リストラクチャリング、フラットな組織コスト削減、競争優位性、顧客満足、ビジネスプロセス・リエンジニァリング、ヴァーチャル企業等などいろいろなことが話題になっている。このような現象の背景として、産業化社会から情報・知識社会への転換期という時代の潮流の認識が必要である。
これらの問題にたいして、いろいろな科学がそれぞれの視点でアプローチを試みている。ロジスティクスは生来的に学際的な学問であり、経済学、経営学、会計学およびエンジニァリングと多くの接点をもつので、当然これら今日的課題に多かれ少なかれ関連がある。
諸科学に共通すると思われる課題として経営組織構造、競争優位性としての価値戦略、コストおよびアライアンスの四つに絞り、諸科学とロジスティクスの立場と見解の比較をしてみた。
1 組織構造
今日の環境変化および益々増大する顧客の要求する条件に対応するために、経営にとって必要なことは組織の柔軟性である。今までうまく機能したヒエラルキーな構造は、複数機能および複数事業部間に発生するコンフリクトに悩まされている。ロジスティクスはコンフリクトを、機能間に存在するトレードオフとしてとらえ、これを構造的に解決することをいち早く提唱した先駆者である。
経営学における人間行動的見地からの研究とロジスティクスにおける物と情報の流れの基本構造の形成という双方からのアプローチが必要である。
2 競争優位性
いろいろな意味での価値の多様化と転換が見られる。社会的には生産者論理から消費者志向へと大きく転換した。企業における資源はエネルギーから情報および知識へと変わった。従って今日の経営における競争優位性は、組織としての革新性および核となるテクノロジーの開発能力である。企業間の関係は敵対的から共存的意識へと変わった。
3 コスト
ABC・ABM (活動基準原価計算/管理) は製造領域から始まり、物的流通およびサービス産業にも使用されてきている。ロジスティクスは本来、部分最適化を排除するためにトータルコストに焦点を当てている。本論に示す二つの事例は、ロジスティクスにおいて如何に単純化した適切なコストドライバーを見つけ出し、製品/顧客別利益性分析に応用し、かつプロセス改善に結びつけたかを図解している。
4 アライアンス
新しい時代における提携の形態として、ヴァーチャル企業および流通チャネルの視点からサプライチェインと共同化を考察の対象とした。
ヴァーチャル企業には三つの概念があるだろう。一つは企業が独立性を保ちながら緩やかな提携を必要な時に特定の目的のために協力し合うということで、第二には情報技術を活用しあたかもテイラーメードの一品製品を顧客に提供できる企業のことを言うのである。第三には自社で設備や人を抱えることを少なくし、必要に応じて他社から調達をするというアウトソーシングを意味するものである。
ロジスティクスにおいては、流通チャネルを垂直に統合化するサプライチェインと水平的な統合を目指す共同化に分類しその得失を論じている。

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