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膜の薬物投与法としての利用
中野 真汎
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1978 年 3 巻 6 号 p. 386-392

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抄録

循環液中に入った薬物は一次過程で消失するという生体の薬物処理機構の理解に基づき, 循環液中および組織中薬物濃度を維持して薬物の効果を保つためにはどのようにするかが検討されてきた. 製剤からの薬物の放出または溶解を吸収の律速段階として循環液中薬物濃度を保つため, 以前から顆粒剤, 錠剤をコーティングする方法が種々試みられ, 実用化されてきた. 近年, 単なる放出持続化のみならず, 放出速度を一定に保ち, より確実に効果を得ようとする努力がなされた. シリコーン膜の利用に始まる合成高分子膜による薬物放出速度の制御の例をあげ, さらに透過速度に及ぼす溶媒, 添加物の影響, 薬物の構造, 分配率と透過定数の関係など基礎的研究も紹介する. また薬物貯蔵庫としての均一分散系と貯蔵庫系との違いを理論式を用いて示す. さらに近年生体適用材料として開発された生物分解性高分子膜, 親水性ゲルを薬物投与材料として使う試みも紹介し, 最後に物理化学的原理の応用としての浸透ポンプ, 静脈注射後組織選択性を有するリボソームの利用にもふれる.

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