抄録
歯小皮は歯のエナメル質表面をおおう耐酸性の薄膜構造として知られ, 歯小皮に関する見解は今日までGottliebらウイン学派の見解, すなわち歯小皮を2層に分け, エナメル質表面を直接おおう部分を第1膜, そのさらに表層をおおう部分を第2膜とした見解が広く信じられてきた.
しかし近年電子顕微鏡の発達にともなって歯小皮に関する概念が再び混沌としてきたため, 我々は歯小皮の微細構造とその形成について観察を行なった.
第1膜は通常のエナメル質とまったく同様な結晶から構成されているが, 通常のエナメル質結晶よりもやや未発達な結晶によって構成されている. 第2膜は微細な穎粒状の結晶からなり, 大小さまざまな不規則な形態の結晶が密に集積している.