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灌流系細胞膜での保存的成分流束の測定
今井 雄介森 博彦村上 政隆後藤 司
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1981 年 6 巻 1 号 p. 61-67

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抄録

1) 灌流系の細胞膜でのNa+, K+, Cl-等の保存的成分の非定常流束の測定につき理論的な考察と具体的な犬顎下腺の灌流実験の結果について報告した.
2) 灌流組織をいくつかの概念的な区画に分割して, 各区画を成分容量体として流束を求める手段について考察した. 区画の性質により一般区画, 容積区画および流体区画に分けられる. 一般区画は流束によりその容積, 濃度共に変化するもので, その容量値, 流束は次式に示される.

容積区画は容積が一定であって流束によりそこでの濃度のみが変化する区画である. 容量値, 流束は次式になる.

流体区画では容積変化即ち容積流が本質的な性質であって, 流体中の濃度の経時的変化はない. 容量値, 流束は次式になる.

上記の式を用いて各区画での流束が求められる.
3) 灌流系においてm個の区画流束があるときは, 流東成分が保存されるかぎり, m-1個の測定から, 残りの流束は算出される.
4) 犬の灌流顎下腺での分泌時のNa+, K+, Cl-の流東を測定した. Na+とCl-は血管側より唾液側へ輸送される. K+は一過性に血管側および唾液側両側に腺細胞から脱出する. K+のこの一過性脱出は従来報告されていた値より大きく, 経過も早いことが明らかになった.

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