抄録
生徒の数学学習においては,解決方法の固着が創造性発揮を阻害している状態である
「問題解決における思考の一時的滞留」がみられる。本研究では,関係の表象と数学の理
解との関係から,生徒の柔軟な思考を促進するための認知について考察する。中学校2年で学ぶ作図を題材として,調査を行った結果,次のことが明らかになった。
・線分の垂直二等分線の作図において生徒には「問題解決における思考の一時的滞留」が見られる。
・線分の垂直二等分線の作図における「問題解決における思考の一時的滞留」の要因として,関係の表象の不十分さが考えられる。
・関係の表象の不十分さによる解決方法の固定化は,問題を状況に合わせて解釈し直すことを阻害する。
・問題解決における思考の一時的滞留を打開するための問題は生徒の柔軟的な発想を引き出す。