2016 年 57 巻 1-2 号 p. 51-62
本研究の目的は, 「Abduction による授業実践において, 児童の仮説設定と検証に関する言語活動に焦点を当て, 児童の変容の様相を明らかにする」ことである。そのため, 神戸市立K小学校の第5学年2クラスの児童 57 名に授業を実施した。授業は, 教師の発言をできるだけ控え, 児童同士の発言を高めるように配慮した。また, 児童が記述するワークシートをワークシートの(1), (2), (3), (4),(5)というように5つに区分し, 児童の変容の様相が明確になるよう工夫した。授業後, 児童のワークシートへの記述を量的に評価し, 対応のある1要因4水準の分散分析及び多重比較の結果, ワークシ ートの(3)からワークシートの(4)の間における児童の言語活動が大きく影響することが判明した。また, ワークシートの(1)と(3)における誤答に着目し, ビデオ録画により, これらの誤答への児童同士の反応に関するプロトコルから, 児童の質的な変容の様相を捉えることができた。