日本未病システム学会雑誌
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口腔と全身の関わり
野村 慶雄
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2005 年 11 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

近年, 高齢化が進むにつれて, 健康でQOLを享受することを願望し, 自己の健康管理を重視する国民が増える反面, 生活習慣病の罹患率が増加している現状がある。健康を維持・増進する上で, 健康な口腔環境は重要である。とりわけこれまでは, 咀嚼機能は全身へ及ぼす影響が大きく, その点からも歯を残そうとの運動が展開されてきた。
口腔内の二大疾患といわれる「う蝕」と「歯周病」は, 健康日本21の対象疾患として取り上げられ, 目標値も設定されている。なかでも成人で歯を失う主原因である歯周病は, 生活習慣病の1つとして評価され, その他の生活習慣病との関わりが注目されている。
口腔内は, 300種類以上の細菌あるいは微生物が棲息する, 体の中でも最も感染の機会の多いところである。う蝕も歯周病もこれら細菌の感染症であり, 慢性に経過するのが特徴である。歯周病の原因が歯の表面に付着する細菌であることから, 適切なコントロールを行えば歯周病を発症させることはなく, また, 発症した歯周病の炎症を軽減することができる。歯周病を放置しておくと, 歯周の炎症組織より, 炎症性サイトカインあるいは歯周病原細菌の菌体外物質などが, 血流に乗って遠隔臓器に影響を与えることが近年確認され, いくつかの全身疾患について, これらの歯周病原細菌と全身の関わりが研究されている。
ここでは, 歯周病が全身疾患へ関わるエビデンスや考えられる機序, ならびに口腔の健康を維持することの意義を解説する。

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