民族學研究
Online ISSN : 2424-0508
「農民社会」・「農民」・農業外労働 : バングラデシュの職業構造の事例から
高田 峰夫
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1991 年 56 巻 1 号 p. 20-44

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抄録

バングラデシュは農業国として知られ,地方のムラは「農民」研究の舞台として好適なように思われるためか,これまでの研究も大部分は「農民社会」としてムラを扱っていた。本稿では,事例として都市から離れた一つのムラを取りあげ,土地所有,農業関連の職種,農業外の職種などについて考察する。景観上は純然たる農村に見えるムラにおいて,意外に農業で自給できている世帯が少なく,多くは各種の農業外の職や都市への移住者からの送金に依存して何とか生活を確保しているという現状が明らかになった。ムラは我々の想像以上に国際経済政治社会と深く関連しており,現代社会を映し出していたのである。否,現代社会そのものと言うっほうがむしろ適切なのかも知れない。これらの分析から,バングラデシュのムラを「農民社会」として捉えることの限界を指摘し,より広い枠組みの中で考察することの必要性を論ずる。

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© 1991 日本文化人類学会
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