日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 159-C
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一般発表(ポスター)
管理施業の異なるアカマツ林における外生菌根量の経時的変動
*岡田 慶一山田 明義
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抄録
 外生菌根は,森林生態系の物質循環において重要な役割を果たしており,その量変動を解明することは,近年における里山荒廃などの問題を考える上でも重要である.しかし,外生菌根量の経時変動に関する情報は少なく,里山の管理施業法が菌根に与える影響を明らかにすることが求められている.本研究では,管理施業の異なるアカマツ林において,外生菌根量の経時変動を解析することを目的とした。
 信州大学演習林内に20m×20mプロットを4区画設定し,各区の設定を対照区(施業なし),下草刈区,間伐・下草刈区,間伐・地かき区とした.施業は2005年5月に行い,調査は対照区では2003年5月から,その他の区は2005年6月から開始した.月毎にリター層下層から土壌試料を7つ各区で採取した.土壌は容量5cm×5cm×10cm(深さ)の土壌を採取し,上層5cmと下層5cmに分けた.各土壌塊からアカマツの細根と菌根を収集して菌根チップ数を計数し,その後細根と菌根の乾重量を測定した.
 その結果,対照区の菌根チップ数は,季節変動より年変動の方が大きかった.また,施業の影響を数ヶ月分の菌根チップ数から比較すると,無間伐の区では有意に多く,間伐の有無が大きく影響していた.無間伐の区内における管理の影響の比較では,調査開始から8月まで,下草刈区は対照区より低い値となったが,それ以降で差は見られなかった.これより,施業のストレスによる一時的な菌根の減少が3ヶ月程度で回復したことが示唆された.菌根の垂直分布は,各区一定して菌根チップ数の約8割が上層に存在し,各区間での傾向の違いは認められなかった.全調査区の菌根100チップ重量を比較すると,間伐・地かき区を除いた全ての区で秋にかけて値が下がる傾向が見られ,この要因として,菌根中の菌鞘組織または根組織の発達程度が変化していることが考えられた.今後,長期的なスパンでの施業の影響による菌根量の変化を継続調査する予定である.
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© 2006 日本菌学会
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