抄録
ナメコ原木栽培では一般に広葉樹が使用されているが、ヒノキを原木として使用しても栽培が可能なことが明らかにされている(森ら1993,車ら2003)。しかし、最適な栽培・発生環境等については明らかにされていない。筆者らは、ヒノキ原木を用いたナメコ栽培における環境条件と子実体発生特性について若干の結果をまとめたので報告する。
和歌山県古座川町、田辺市に試験地を設定し、広葉樹原木栽培方法に準じてヒノキ原木にナメコ種菌を植菌し栽培試験を行った。2003年3月に、両試験地の周辺で間伐したヒノキから長さ1m、直径8-15cmの原木を作成し、2品種の種駒を用いて植菌した。対照としてサクラ原木にも同様に接種を行った。原木、接種方法の違いを相殺するため、両試験地で接種した原木の一部を交換した。植菌した原木はイカダ伏せの形にし、スギ枝葉をかけて伏せ込んだ。1-2夏経過後、伏せこみ中に子実体が少数発生した段階で、地伏せまたは合掌型に組んで子実体を発生させた。栽培期間中の気温、湿度等を測定した。
古座川試験地では2夏経過後にホダ木を展開した結果、いずれの樹種、品種でも田辺試験地より発生量が多く、1品種はサクラホダ木以上の発生量であった。田辺試験地では、1夏経過後にホダ木を展開したがその年の発生はごく少なく、2夏目にホダ場の気温が30°C近くまで上昇し湿度が55-75%程度に下がるなどホダ木管理に不適な環境であったこと、2夏経過後の発生期間に低湿度であったことなどにより発生量が低下したものと考えられた。いずれの試験地でも品種ごとの発生量の差は明らかであった。
以上より、ヒノキ原木ナメコ栽培では適切な条件では初回発生時に十分な子実体発生量が得られたが、1夏経過後にホダ木を展開した場合に、高温、低湿度、または子実体発生期間の低湿度などにより収量が大幅に減少することがあることがわかった。また使用する品種による収穫量の差も無視できないことが明らかになった。