日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 64-C
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一般発表(ポスター)
屋久島低地照葉樹林におけるキノコの発生と地形性
*辻野 亮佐藤 博俊今村 彰生湯本 貴和
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抄録

本研究は,距離標本法をもちいてキノコ発生量の地形差を定量的に比較するとともに,屋久島低地照葉樹林に発生するキノコ相を報告する. キノコのセンサスルートは,尾根と谷に1本づつ210_から_350mのルートを4箇所の低地照葉樹林内に設置した.調査は2度づつ,2005年8月下旬と9月上旬に行った.全16回の調査において20科180株のキノコを確認した.主要な科であったベニタケ科・テングタケ科・イグチ科・オニイグチ科・サルノコシカケ科は尾根ルートで,キシメジ科は谷ルートで推定発生密度が高かった.外生菌根を形成する樹木が尾根に生育するのに対して谷にはあまり生育しないことから,ベニタケ科・テングタケ科・イグチ科・オニイグチ科は菌根を形成する制約から地形特異的にキノコが発生したのであろう.ただしキシメジ科は菌根菌を含むが,腐生菌も多く含んでいることから必ずしも尾根でよく見られるということはなかったと考えられる.すべての種を込みにした尾根・谷ルートのキノコ株遭遇率(出現キノコ株数/ルート長)は100.0株/kmと65.8株/km,推定発生密度は318.8株/haと 388.6株/haであった(DISTANCE 4.1による).尾根ルート(1.57m)と谷ルート(0.85m)のESW値(発見しやすさの指標)は2倍弱異なり,子実体の発見しやすさが大きく異なっていた.林床を歩きながら子実体を探索する場合に良い発見率が期待できるのは探索者の1_から_2m近傍だけであると推測できる. 2001年から2005年までの調査によって39科143種と多数の未同定種を発見した.現在まで屋久島低地照葉樹林に出現する菌類相について取りまとめた研究はなかったので,本研究報告は南方産菌類相を明らかにしてゆく資料となるであろう.

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© 2006 日本菌学会
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