日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第51回大会
セッションID: F8
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第4会場
ナメクジはナメコのヌルヌル(粘性表皮)が嫌い
*澤畠 拓夫
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抄録

菌類の子実体の形態は多様性に富んでいるが,その生態的な機能についてはほとんど明らかにされていないのが現状である.ナメコのような強い粘性を持つ表皮によって覆われている子実体の場合,ナメクジは粘性表皮に覆われた部分からの摂食を避け,裏側の子実層面から摂食する傾向がある.このことは,ナメクジが粘性表皮を食べるのを好まない可能性を示している.そこでナメコの粘性表皮がナメクジに嫌われるかどうかを調べるために,1:ナメコ子実体の傘の表皮を剥いだものと表皮付きのもの,2:ナメコの表皮を貼り付けたヤナギマツタケ子実体の傘と貼り付けていない傘に対するナメクジの摂食の度合いについて比較実験を行った.
実験に用いた子実体は栽培施設で発生させたものを用い,ナメクジは当敷地内の広葉樹林で10月28日に捕獲したヤマナメクジの幼体5匹(体長5 cm程度)を用いた.実験は、プラスチックの容器(直径11 cm,高さ7 cm)に石膏と活性炭を容積比で10:1に混合した床の上に,水洗した子実体(傘の直径1cm程度のもの)を置き,2日間絶食させた上述のナメクジを1個体ずつ放して20℃下で一晩放置した後,子実体上に残された摂食痕跡の広さの度合いを5段階評価して検定する方法で行った.各実験は,5つの容器で3反復ずつ行った.
表皮を剥いでいないナメコの子実体のみを与えた場合,子実体に残された摂食痕跡は小さいものがほとんどであった.表皮を剥いだナメコと剥いでいないナメコでは,剥いだものの摂食度合いは剥いでないものより有意に大きかった(U検定:P<0.01).ナメコ子実体の表皮を貼り付けたヤナギマツタケ子実体は,貼り付けていない子実体よりも摂食の度合いが有意に小さかった(U検定:P<0.01).以上の結果から,ナメコの粘性表皮はナメクジに好まれないことが示唆された.

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© 2007 日本菌学会
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