日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第51回大会
セッションID: A10
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第1会場
Polyporus(担子菌類サルノコシカケ科)及び近縁属の分子系統学的研究
*早乙女 梢太田 祐子服部 力柿嶌  眞
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抄録
Polyporus(タマチョレイタケ属)は,担子菌類サルノコシカケ科の一属であり,子実体が有柄で結合菌糸骨格菌糸の未分化な2菌糸型の種が広く含められている.このため,本属は子実体の外形が多様な種が包括されており,属内には子実体の外部形態に基づいたPolyporus, Favolus, Melanopus, Polyporellus, Admirabilis及びDendropolyporusという6つの形態グループが設けられている(Núñez and Ryvarden, 1995).
本研究は現在1つの属として扱われているPolyporusの分類学的な妥当性を検証する事を目的とし,本属22種52菌株及び近縁属10属15種18菌株を用い,LSUnrDNA領域, rpb2 遺伝子領域及びatp6領域による分子系統解析を行った.
解析の結果,系統樹上には8個の単系統群が検出され,そのうち2単系統群には本属菌と近縁属菌が含まれていた.したがって, Polyporusは単系統群ではないことが明らかとなった.
属内の各グループの系統関係については, Polyporellusグループの種は同一クレードを形成した.一方, PolyporusグループとMelanopusグループの種は複数のクレードに含まれ,これら2グループは単系統なグループではなかった.なお, Favolusグループ, AdmirabilisグループとDendropolyporusグループの種については系統的な位置を特定することができなかった.
以上の結果から, Polyporusは単系統群ではなく,また形態的にも遺伝的にも多様な種が含まれており,分類学的再構築が必要であることが明らかになった.
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© 2007 日本菌学会
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