西日本産の細胞性粘菌Polysphondylium pallidum 群の１未記載種について

抄録

細胞性粘菌の一種群，Polysphondylium pallidum 群の分類は混乱していたが，交配関係やDNA情報を考慮することによって，その分類が整理されつつある．この種群の特徴は，胞子が長楕円形で，胞子塊が白いこと，子実体の柄先端から最上部の輪生枝までの距離が極端に長くならないこと，である．演者は，本研究により１未記載種を見出したので，ここに報告する．1996および1997年に西日本の森林土壌から単離された株の交配関係を調べたところ，既知の交配グループとは異なる，一つの交配グループを見出した．このグループには，交配型が少なくとも２つ存在することが認められた．また，5SrDNA とITS領域の塩基配列を調べ，分子系統学的解析を行った（第４７回大会口頭発表参照；pal-B）．本研究では，このグループの形態を詳細に調べ，他種との比較を行った。主な特徴は，分枝の長さが既知種に比べて長いことや柄基部の幅が既知種に比べて広いことであった．