日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第52回大会
セッションID: S4-3
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植物に狙われる菌類 - 菌従属栄養植物研究の最前線 -
外生菌根性きのこにとってシャクジョウソウ亜科植物は邪魔者か?
*山田 明義
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抄録

シャクジョウソウ亜科植物の炭素源を含むほぼ全ての栄養源は,きのこを形成する担子菌類の幾つかの分類群に所属する外生菌根菌から直接供給を受けていると考えられている.外生菌根菌は森林樹木と相利共生関係にある一方で,シャクジョウソウ亜科植物とはmonotropoid菌根と呼ばれる外生菌根に類似した構造の菌根を形成する.このmonotropoid菌根において,外生菌根菌からシャクジョウソウ亜科植物への一方的な物質輸送がなされていると考えられている.このため,「シャクジョウソウ亜科植物の宿主は外生菌根性きのこ類である」と言える.日本国内には,ギンリョウソウ,シャクジョウソウ,アキノギンリョウソウの少なくとも3種のシャクジョウソウ亜科植物が分布する.必ずしも全容は解明されていないが,ギンリョウソウはベニタケ科と,アキノギンリョウソウはベニタケ属と,シャクジョウソウはキシメジ属と,それぞれ特異的にmonotropoid菌根を形成する.シャクジョウソウ亜科植物の系統進化学的解析と菌根菌との特異的関係についての解析より,同亜科植物はパートナーとなる菌根菌を次第に絞り込む方向で進化してきたと考えられている.この進化過程は,同亜科植物の種子発芽実験などを通じて,菌根特異性のトレードオフ(植物間におけるパートナーとなる菌類をめぐる競争回避と関係成立の頻度維持)を明らかにすることで,次第に解明されつつある.しかし,そもそも外生菌根性きのこにとってmonotropoid菌根を形成することがどれほどの意味(メリット,デメリット)を持つのかについては,未だ殆ど解明されていない.至近的には,外生菌根性きのこにとっては,シャクジョウソウ亜科植物は養分を収奪するだけの邪魔者(cheater:詐欺師)と見なすこともできるが,よりマクロなスケールから俯瞰した場合,果たして両者にはどのような関係を見出す事ができるのだろうか?本発表では,これまでに得られた実験データとともに仮説なども提示しながら,外生菌根性きのことシャクジョウソウ亜科植物の関係についての話題提供としたい.

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© 2008 日本菌学会
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