抄録
著者らはこれまで有限深さ流路内の丘陵地形を過ぎる安定成層流に関して, 差分法 (FDM) による二次元直接数値シミュレーション (DNS) を行い, 種々の知見を得た.本研究では, 安定成層場における山越え気流について, より現実に近い状況を模擬するため, 主流方向 (x) と鉛直方向 (z) で規定される断面をスパン方向 (y) に一様に拡張した三次元DNSを行った.過去の研究と同様, 丘陵地形の上流側地面上には滑り条件を課し, 丘陵地形の表面とその下流側地面上にのみ粘着条件を与えた.特に丘陵地形背後の非定常な剥離-再付着流れに対する安定成層の効果に注目し, 二次元計算との相違点と類似点などを議論した.中立成層流のK=0と弱い安定成層流のK=0.8では, 二次元計算と三次元計算では明らかに異なる様相を呈する.これはスパン方向 (y) における流れの三次元性の出現に起因するものである.これに対して, 強い安定成層流のK=1, 1.3では, 二次元計算と三次元計算における地形周辺流れは, 丘陵地形のすぐ近傍において非常に類似した傾向を示す.これは長波長の風下波が丘陵地形の下流側に励起されるためである.つまり, 丘陵地形の下流側に風下波が励起されるような強安定成層場では, スパン方向 (y) への流れの三次元性は強く抑制され, x-z断面内の二次元的な流れ場を呈することが示された。