抄録
1999年1月27日に、新潟県刈羽郡西山町石地海岸へ漂着死したミンク(コイワシ)クジラ(Balaenoptera acutorostrata)(全長562cm)と、1998年10月14日に、新潟県村上市三面川河口付近へ生きたまま漂着したハナゴンドウ(Grampus griseus)(全長269cm)の卵巣を、組織学的に観察し、成熟度を確かめてみた。ハナゴンドウは、新潟市水族館へ運び、回復を図ったが、翌日死亡した。卵巣重量は計測できなかったが、ミンク卵巣長径は112~125mm、短径は25~28mm、ハナゴンドウの卵巣長径は45~50mm、短径は15~18mmであった。肉眼観察では、各卵巣葉はいずれも背腹両面共に円滑で、発達した卵胞の隆起や白体・黄体は認められず、未成熟状態のものと推定された。ハナゴンドウのC葉には、結合組織塊より成る円盤状隆起が付着していた。顕微鏡観察では、いずれの卵巣葉も皮質部は原始および一次卵胞で占められ、二次卵胞は少なく、グラーフ卵胞はまれに認められたにすぎない。いずれの発育段階の卵胞も、閉鎖退行状態に陥っているものがみられた。黄体や白体は全く観察されず、排卵の兆候もなく、両種ともに未成熟体とみなされた。