日本海セトロジー研究
Online ISSN : 2435-3760
Print ISSN : 0918-3930
日本の鯨類漁業の現状とその資源管理のあり方
粕谷 俊雄
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1997 年 7 巻 p. 37-49

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抄録

国際捕鯨委員会(IWC)は 1982年に 3年後の商業捕鯨の停止を決定し、日本政府は僅かに遅れてこれを受け入れ、 1988年 3月をもって主要な捕鯨活動を停止した.現在の日本ではミンククジラの調査捕獲と IWC管轄外のイルカ等の小型種の商業捕獲が、併せて 10種 2万 2千頭ほどを上限として許され、漁獲物は水族館での生体展示、鯨肉、イルカ肉、鯨肉の代用あるいは詐称食品としていくぶん晴好的に利用されている.その資源状態は、当面は危険のないもの、枯渇資源から依然として漁獲しているもの、情報不足で判断できないものなど多様である.これらの生物を漁業資源として管理するとき研究者や行政当局に期待される仕事は少なくなく、現状では成功の見通しは必ずしも明るくはない.優れた環境の中で心豊かに生きることが評価されつつある現在、我が国においても環境生物としての鯨類の価値を認識し、従来の漁業資源としての利用形態を順次改めていく時期にあると考える.

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© 1997 日本海セトロジー研究
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