抄録
前篇(第1報)に引き続いて,この後篇(第2報)では,芦ノ湖産の硅藻7属104種類が記載された.従って前後両篇を合せると,著者らが芦ノ湖から同定し得た硅藻は,39属285種類となった.因みに従来室伏(1936)1),津村(1937)2),平野(1979)3)の3氏によって芦ノ湖産として報告されていた硅藻は,32属140種類に過ぎなかった.
著者らは,芦ノ湖の硅藻フロラを,すでにSKVORTZOW(1936)9)によって詳細に研究報告されていた琵琶湖と木崎湖の夫々の硅藻フロラとの比較を試みた芦ノ湖はFOREL氏の意味での“熱帯湖”であるが,その成因は火山性(volcanic)のものである.琵琶湖は同じく“熱帯湖”であるが,その成因は構造性(tectonic)のものである.木崎湖は“温帯湖”であるが,その成因は琵琶湖の場合と同様に構造性のものである.ところで,3湖はこのように夫々異った性質をもっているにも拘らず,比較の結果は,硅藻フロラに関する限りでは,3湖はほとんど同じであることが判ったが,これは著者らにとっても全く意外なことであった.しかし,これは果して,事実と合致したものであろうか.この比較の中に,もっと重要な事実が抜け落ちていたのではないだろうか.その事実とは,例を琵琶湖にとると次のようになる.
琵琶湖は芦ノ湖や木崎湖とは比較にならぬ程に,地史的に甚だ古くて,且つ大きい湖である.琵琶湖の硅藻フロラの特徴は,固有あるいは準固有の2種の硅藻,Stephanodiscus carconensisとMelosira solidaが優占的に出現することにある.
硅藻フロラの真の特性は,夫々の湖における硅藻植生(Diatom vegetation)を充分に調べた上でないと,決められない.芦ノ湖では,植生の調査は残念ながら未だ充分になされていない.
今回の著者らの研究で,芦ノ湖にMeosira undulata (変種のnormanniではない!),Oestrupia biconstracta,Pinnularia schwaeivar. undulata,Surirella pantocsekiiなどが出現することが判ったことは,特記に値するものであろう.