討論会講演要旨
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2. 尿素樹脂に関する研究、アルカリ触媒の擧動について
井上 正男川合 道治
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1955 年 5 巻 p. 36-37

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抄録

尿素樹脂製造の際の最も重要な因子は反応液のPHの調節である。特にB状態樹脂の製造の場合には反応間のPHの変化曲線の差により生成樹脂の組成が複雑に変化する。PHの調節には通常,苛性ソーダ,水酸化バリウム,炭酸ソーダ,重曹,硼砂,酸性燐酸ソーダ,アンモニヤおよびアンモニウム塩等が用いられ,従来これらの触媒の作用に関して数多くの報告があるが,未だ充分納得出来ない点もある。〈BR〉我々は尿素ホルムアルデヒド反応液の反応間のPH変化曲線と生成樹脂(B状態)の組成との関係を調べる目的で,実験を試みているが,先づアルカリ触媒の作用について二三の考察を行った。〈BR〉(1)一般にホルマリンをアルカリで中和すると,酸性では主としてメチレングリコールの形で存在していたホルムアルデヒドは,ほゞ(OH)に比例して自由型ホルムアルデヒドに変る。これに尿素溶液を混合すると殆んど瞬間的にPHは約2降下し,反応時間と共に徐々に上昇する。この上昇はメチロール化反応率の上昇とほゞ並行する。この変化はアルカリ性に於ける尿素とホルムアルデヒドの反応機構と密接な関係があると考える。〈BR〉(2)硼砂の如き緩衝作用のあるアルカリ物質の場合も(1)と同様であるが,添加量が或る一定量を越えると緩衝作用が効いて来る。〈BR〉(3)アンモニヤの場合には,ホルマリンの中和の為には苛性ソーダの場合に比べて著しく多量に加えねばならないが,殆んどホルムアルデヒドと反応していろんなメチレンアミンとして存在し,アルカリ性の場合は一部ヘキサミンまで進み,それらが平衡を保っている。アンモニヤの代りにヘキサミンを使用すると逆に分解して,両者は区別がつかなくなる。アンモニヤの添加量が少い場合には(1)の如き変化が観察されるが,普通の場合はメチレンアミンの一種の緩衝作用で観察されない。〈BR〉(4)アンモニヤの触媒作用は低温(40℃以下)の場合と高温の場合で趣を異にする。低温の場合は反応時間の経過と共にPHは徐々に上昇し,最高約1上昇する。これはホルムアルデヒド,アンモニヤ,メチレンアミン間の平衡が,メチロール化反応の進行に伴い,多量のホルムアルデヒドを消費するので,アンモニヤを遊離する方向に移行する為である。〈BR〉高温になるに従い,PHの上昇は急激となり,80℃以上では,尿素混合の瞬間に約1上昇し,その後は下向に転ずる。〈BR〉このPHの降下はメチロール尿素とメチレンアミンとの反応に基いていると考えられる。

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