抄録
高分子ゲル全体を概説するために, その構造, 形成過程, 性質, 応用について記述した。ゲルの構造については対象とする尺度を巨視的なものから微視的なものまで分けた考え方が適切である。形成過程ではパーコレーション・モデルとの対応から導かれるゾル-ゲル転移の理論を紹介した。転移点近傍における物理的諸量は転移点からのずれを示す換算変数のべき乗で表され, 転移点近傍は臨界現象の一つとして取り扱われる。そして高分子ゲルが示す性質として網目の膨潤, 弾性, 保水性について記した。最後に, 応用について比較的近年活発に研究・開発されているものの例をみた。高分子ゲルの活用範囲は生医学分野から土木・建築などに至るまで非常に多岐にわたり, ゲルは素材として高い可能性を持っている。