抄録
フェノール樹脂の最も簡単な初期縮合物と考えられるジオキシジフェニルメタン (2核体と略) の立体構造を分子軌道法を用いて調べた。この結果安定な立体構造はメチレンを介して結合した2個のベンゼン環はその分子面を向き合った, 屋根型の構造をとることがわかった。このとき, 2個のOH基の相対的な置換位置によってo, o′, o, p′, p, p′のグループに分けられるが, o, o′型ではOH基間に分子内水素結合が形成される。このときの水素結合エネルギーは4.2kcal/molと推定された。更に2核体の立体構造を基に3核体の構造を調べた。このモデルでは3個のベンゼン環の空間配置として, 両端のベンゼン環が互いに異なる側に並ぶ場合 (ジグザグ型) と, 同じ側に並ぶ場合 (コの字型) が考えられる。これに加えて3個のOH基の相対位置によって多くの空間配置が考えられる。現在の計算では最も安定な構造は3個のOH基間に分子内水素結合が形成されたジグザグ型であることがわかった。しかしながら, コの字型の空間配置も前者と比較してエネルギー差が比較的小さいために, 3核体より大きなオリゴマーではジグザグ型とコの字型が入り混った状態で存在することが考えられる。この計算から2核体と3核体の原子価電子密度は, 分子内水素結合を形成しているOH基を除けば近似的に等しいことがわかった。しかしながら分子内水素結合系のOH基のH原子の電子密度は, 3核体の方が2核体のそれよりプラス性が大きく, プロトン化し易いと考えられる。このことは更に縮合が進んだオリゴマーで分子内水素結合が広がるならば, よりプロトン化は増加し, それだけ酸性が強くなることが考えられる。