抄録
(1) メラミンはトリアジン環のN原子と相手のNH2基の間の水素結合によって会合体を形成することができる。ここでは最も形成の容易な2量体を考え, CNDO/2法を用いて水素結合エネルギーを計算し, 7.02kcal/molの値を得た。この値はメチロールメラミン間の水素結合エネルギーと比較して大きな値である。また, メラミン2量体間に働く水素結合の形式は, メチロールメラミンのオリゴマー間の分子鎖の間にも働くことが考えられる。メラミン2量体に対するUVスペクトルをCNDO/CI法で計算したが, その形状は基本的にはメラミンやメチロールメラミンのそれと類似している。
(2) 二級メチロールメラミンにおいては, 分子内水素結合の形成はエネルギー的に不安定である。したがって, この種の水素結合の形成にはエネルギーが必要であり, 一種の活性化状態と考えることが出来る。この状態にあるモデルのπ結合次数, 電荷密度のCNDO/2法による計算からは, 脱水, 脱ホルムアルデヒド反応が起り易いことが推定された。また, これらの両反応の結果, 二級メチロール基は-N=CH2基へ変化し, 中間体として作用することが考えられる。
(3) モノメチロールメラミン (1MM) のCH2OH基間の水素結合系にCNDO/2法を適用して, エネルギーの最適化を行ったところ, 1MM間の距離に対し1.57Å, 水素結合エネルギーの値として3.18kcal/molを得た。この値は通常のアルコール間の水素結合エネルギーの値に等しい。1MM間の平衡距離が短かくなることは, エネルギー的には不安定な状態になることである。距離が1.57Åから1.10Åになった場合のモデルに対し, π結合次数, 電荷密度の値の変化を調べると安定な状態と比較して, 脱水, 脱ホルムアルデヒド反応が起り易いことを示している。したがって, 分子間水素結合状態が熱的に活性化されると, 一種の活性化状態として作用し得ることを示した。しかしながら, 分子間水素結合は温度上昇とともに形成が困難になるので, この状態が活性化状態として働くことは, 分子内水素結合と比較して困難と考えられる。