抄録
高分子の熱膨張挙動を支配する化学構造上の因子について考察した。高分子鎖が非直線的かつ柔軟で多様なコンフォメーションをとりうるものよりも, 直線状で剛直な棒状構造の高分子の方が熱膨張係数は小さくなるが, 同時に配向の影響を受け易く異方性が強くなる。高度に延伸配向して直線状に伸びた高分子鎖は, 鎖軸方向に対しては負の熱膨張性, 鎖軸と垂直な方向に対しては正の熱膨張性を示す。これは高分子鎖の熱揺動に起因する。熱硬化性樹脂の熱膨張係数は橋かけ点が多くなるにつれて, Tg以上では小さくなりTg以下では逆に大きくなる。この挙動はミクロブラウン運動に対する橋かけ点の抑制作用を自由体積の概念に基づいて考察することによって説明できる。また低温副分散を抑制すると熱膨張係数は低下するが, この挙動もガラス状態における自由体積の概念で説明できる。