Neurosonology:神経超音波医学
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経頭蓋超音波ドプラ法による奇異性脳塞栓症の診断とその予後
伊藤 泰司半田 伸夫寶學 英隆飯地 理橋本 弘行坂口 学松本 昌泰
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1997 年 10 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

prospective studyの結果, 内頚動脈狭窄症では無症候性であっても60%以上の狭窄例では内科的治療例より血栓内膜剥離術 (CEA) の方がを脳梗塞発生の予防効果があることが報告されている.Carotid duplex ultrasound (CDUS) は無侵襲であり, 頻回な検査が可能であり, 狭窄度のスクリーニングには有効性が報告されている.著者らの施設ではCDUSとMRAの組み合わせにより, 血管撮影を行なわずにCEAの適応を決定している.今回の研究は術前CDUSで測定した内頚動脈狭窄部のpeak systolic flow verocity (PSV) およびend-diastolic flow velocity (EDV) 値, carotid index (peak carotid artery velocity/common carotid artery velocity) を測定して手術所見での実際の残存血管内腔との相関を検討した.対象は91例の内頚動脈狭窄症の患者で, 8例は両側の狭窄を認めるためtotal99血管について検討している.37血管は無症状, 62血管は症候性であった.CDUSは4-7また5-10MHz linear transducer (ATL UItra-mark9HDI scanner) を使用した.結果として, 手術所見での残存血管内腔は0.21-2.72mmで平均1.08mmであった.77%の血管では残存血管内腔が1.5mm以下であった.PSVが440cm/s以上, EDVが155cm/s以上, またcarotid indexが10以上の症例は実際の内腔は1.5mm以下であった (specificity100%, sensitivityはそれぞれ58%, 63%, 30%) .またこの三つの指標がすべて当てはまる症例ではsensitivityは72%に達した.またPSVが200cm/s以上であり, EDVが140cm/sec以上かcarotid indexが4.5以上である例ではsensitivityは96%, specificityは61%であった.著者らがresidual lumenが1.5mm以下をcutoff pointとした理由は, 残存血管内腔が1.5mmであればNASCET criteriaでは60-75%の狭窄に相当すると考えている.また著者らの過去の研究ではCDUSでresidual lumenが1.5mm以下になると内頚動脈の血流のhemodynamic changeがおこるという結果からである.以上の結果から, 内頚動脈狭窄症ではCDUSによるPSV, EDV, carotid indexはresidual lumenがCEAの適応を決定に非常に有用であると結論づけている.

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© 日本脳神経超音波学会
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