Supplement of Association of Next Generation Scientists Seminar in The Japanese Pharmacologigal Society
Online ISSN : 2436-7567
2022 Sapporo
Session ID : 2022.1_AG-3
Conference information

[title in Japanese]
*Izawa Shuntaro
Author information
CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

Details
Abstract

メラニン凝集ホルモン(Melanin-Concentrating Hormone: MCH)は19残基のアミノ酸からなる環状の神経ペプチドで、睡眠、摂食、エネルギー代謝、不安行動といった多様な機能に関与する。哺乳類ではMCH産生神経(MCH神経)は視床下部外側野に局在し、MCH脳室内投与はレム睡眠を誘導することに加え、摂食量上昇やエネルギー消費節約に機能する。MCH受容体アンタゴニストは摂食量低下とエネルギー消費上昇を誘導することから抗肥満薬としての可能性が複数の製薬会社から検証され、臨床試験においても効果が確認されている。しかし、抗肥満を誘導する神経メカニズムは不明で、また、悪夢や頻脈といった副作用から現在まで実用化には至っていない。そこで、MCH神経がどのようなメカニズムでエネルギー恒常性制御に機能しているのか、MCH神経を後天的に脱落したマウスを用い検証を行った。

 ドキシサイクリンの有無によってMCH神経特異的にジフテリア毒素発現を誘導できるダブルトランスジェニックマウス(MCH-tTA; TetO DTA)を作成し、16週齢からMCH神経の脱落を誘導した。当該マウスは対照群に比べ体重が低く、酸素消費量と二酸化炭素産出量が上昇していた一方で摂食量と飲水量に変化はなく、エネルギー消費の増加が痩せの要因であった。酸素消費量と自発行動量の同時測定から算出した行動量非依存的な酸素消費量もMCH神経脱落によって上昇していた。MCH神経脱落マウスは脂肪組織特異的に重量が低下し、熱産生とエネルギー消費に機能する褐色脂肪組織が活性化していた。褐色脂肪組織に微量注入した仮性狂犬病ウイルスの逆行性感染を経日的にトレーシングしたところ、MCH神経は延髄縫線核の交感神経プレモーターニューロンを通じ褐色脂肪組織を支配していることが示唆された。MCH神経の投射は延髄縫線核に認められ、MCH神経脱落マウスの延髄縫線核は活性化状態にあったことから、生理的なMCH神経活動は延髄縫線核に抑制性のシグナルを送っているものと考えられる。今後、延髄縫線核をターゲットとしたMCH機能抑制によって、より鋭敏に抗肥満を誘導できる可能性が期待できる。

Content from these authors
© 2022 © The Author(s) xxxx
Previous article Next article
feedback
Top