Supplement of Association of Next Generation Scientists Seminar in The Japanese Pharmacologigal Society
Online ISSN : 2436-7567
[English version not available]
Displaying 1-6 of 6 articles from this issue
  • Miwa Hideki
    Session ID: 2022.1_AG-1
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    統合失調症は、陽性症状・陰性症状・認知機能障害などの多様な臨床症状を呈する精神疾患であるが、神経生物学的には単一の疾患ではなく、複数の神経回路異常病態が併存する「統合失調症スぺクトラム」であり、患者ごとに異なる症状や臨床経過あるいは治療反応性を示していると考えられている。また、統合失調症の主訴である幻覚や妄想などの精神症状は「ヒト特有の病理現象である」という考えが一般的であり、健常人あるいは患者を対象とした脳画像研究が数多くなされているものの、マウスなど実験動物を用いた細胞・神経回路レベルでの研究とのギャップがあり、限界があるとも考えられてきた。たとえば、実験動物をもちいた精神疾患研究では、精神疾患患者と類似の行動を示すという指標(表面妥当性)に基づき、疾患モデルを評価することが多いが、一見ヒトと似たように見えるマウスの行動が、実際にヒトの行動とどれだけ対応するのかは不明であり、その検証も困難である。このような背景のもと、われわれはマウスなどの実験動物と臨床研究との橋渡しをする双方向トランスレーショナル研究の一助となる神経生理学的指標として、ガンマ帯域オシレーションおよびノンレム睡眠スピンドル波に着目し、疾患横断的な共通病態の解明を目指している。本研究では統合失調症のGABA仮説(Lewis DA & Gonzalez-Burgos G, 2006)に基づいて作成した パルブアルブミン(PV)ニューロン特異的にGABA合成酵素GAD67遺伝子を欠損させたPVニューロン特異的遺伝子欠損マウス(PV-GAD67 KOマウス)およびアデノ随伴ウイルスを用いた視床網様核特異的GAD67欠損マウスを用いて、ガンマ帯域オシレーションとスピンドル波に関する病態解析およびその妥当性を検証する。

    Download PDF (411K)
  • Fujiyama Tomoyuki, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa
    Session ID: 2022.1_AG-2
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    Although REM sleep (REMS) is ubiquitous in mammals, the molecular/neural mechanism of REMS regulation remains unknown. We previously established the Dreamless mutant mice exhibiting ~50% reduction in total REMS time (Funato et al., Nature 2016). We identified an SNP specific to Dreamless mice within the Nalcn gene, which leads to a single amino acid change (N315K) of NALCN, a non-selective leak cation channel. To elucidate the responsible brain regions / neuronal subtypes through which NALCN regulates REMS, we generated flox and FLEx (flip-excision) knock-in mice bearing Cre- dependent loss-of-function and gain-of-function Nalcn alleles, respectively. In Nalcn-FLEx mice, we confirmed that the mice crossed with a systemic Cre-expressing line Actb-iCre phenocopied the Dreamless mice on electroencephalogram and electromyogram (EEG/EMG) analyses. In Nalcn-flox mice, we confirmed a neuronal subtype-specific deletion of Nalcn mRNA in adult brain tissues. Recently we observed that NALCN has distinct roles in forebrain and pons-medulla regions for REM sleep regulation, by using Foxg1-IRES-Cre or En1-Cre lines. Now we are analyzing the sleep phenotype of Nalcn genetically-modified mice with detailed sleep stage scoring.

    Download PDF (341K)
  • Izawa Shuntaro
    Session ID: 2022.1_AG-3
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    メラニン凝集ホルモン(Melanin-Concentrating Hormone: MCH)は19残基のアミノ酸からなる環状の神経ペプチドで、睡眠、摂食、エネルギー代謝、不安行動といった多様な機能に関与する。哺乳類ではMCH産生神経(MCH神経)は視床下部外側野に局在し、MCH脳室内投与はレム睡眠を誘導することに加え、摂食量上昇やエネルギー消費節約に機能する。MCH受容体アンタゴニストは摂食量低下とエネルギー消費上昇を誘導することから抗肥満薬としての可能性が複数の製薬会社から検証され、臨床試験においても効果が確認されている。しかし、抗肥満を誘導する神経メカニズムは不明で、また、悪夢や頻脈といった副作用から現在まで実用化には至っていない。そこで、MCH神経がどのようなメカニズムでエネルギー恒常性制御に機能しているのか、MCH神経を後天的に脱落したマウスを用い検証を行った。

     ドキシサイクリンの有無によってMCH神経特異的にジフテリア毒素発現を誘導できるダブルトランスジェニックマウス(MCH-tTA; TetO DTA)を作成し、16週齢からMCH神経の脱落を誘導した。当該マウスは対照群に比べ体重が低く、酸素消費量と二酸化炭素産出量が上昇していた一方で摂食量と飲水量に変化はなく、エネルギー消費の増加が痩せの要因であった。酸素消費量と自発行動量の同時測定から算出した行動量非依存的な酸素消費量もMCH神経脱落によって上昇していた。MCH神経脱落マウスは脂肪組織特異的に重量が低下し、熱産生とエネルギー消費に機能する褐色脂肪組織が活性化していた。褐色脂肪組織に微量注入した仮性狂犬病ウイルスの逆行性感染を経日的にトレーシングしたところ、MCH神経は延髄縫線核の交感神経プレモーターニューロンを通じ褐色脂肪組織を支配していることが示唆された。MCH神経の投射は延髄縫線核に認められ、MCH神経脱落マウスの延髄縫線核は活性化状態にあったことから、生理的なMCH神経活動は延髄縫線核に抑制性のシグナルを送っているものと考えられる。今後、延髄縫線核をターゲットとしたMCH機能抑制によって、より鋭敏に抗肥満を誘導できる可能性が期待できる。

    Download PDF (416K)
  • Kohji Fukunaga
    Session ID: 2022.1_AG-4
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    認知症患者数が2025年には700万人を超える。認知症の原因疾患としては50%がアルツハイマー病、15%はレビー小体病(パーキンソン病を含む)である。世界では抗体医薬をはじめ根本治療薬の開発にしのぎを削っている。私達の研究では早期認知症患者であれば既存の治療薬のリポジショニングで認知症への進行を抑止することができる。新規の低分子薬の新薬開発になると多額の開発費用と時間が必要である。私達も、アルツハイマー病治療候補薬としてカルシウムチャネル活性化薬であるSAK3の前臨床試験を行い、製薬企業への導出を模索している。SAK3はT型カルシウムチャネルを活性化して、神経伝達を促進することで認知機能を高める化合物である。さらに、海馬における神経新生、アルツハイマー病の原因タンパク質であるβアミロイドの分解を促進することで脳機能を維持することができる疾患修飾治療候補薬である。同様にレビー小体型認知症に対しては脂肪酸結合タンパク質(FABP)阻害薬を開発中である。私達はレビー小体型認知症の原因タンパク質であるシヌクレインが毒性の高いオリゴマーを形成する際に、FABPと会合すること、FABPはシヌクレインオリゴマーの神経細胞間の伝播にも関与することを見出した。FABP阻害薬はシヌクレインのオリゴマー形成と神経細胞への取り込みを阻害することでシヌクレインの伝播と神経細胞死を抑制した。SAK3とFABP阻害薬は認知症の進行を抑止することができる。認知症の早期診断と疾患修飾治療薬を組み合わせることで、健康脳長寿社会を実現できる。アカデミア発シーズの製薬企業への導出は極めて困難である。その理由としては画期的な作用機序と化学構造を持つFirst-in-class の薬でなければ大企業への導出は難しい。しかし、アカデミアでは脳科学を基礎とした新薬開発、リポジショニングへのチャレンジを続けるべきである。高齢化社会を迎える我が国において、認知症を予防する治療薬の開発状況を紹介する。

    Download PDF (403K)
  • Kamagata Kiyoto
    Session ID: 2022.1_AG-5
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    Intrinsically disordered regions (IDRs) of proteins are involved in many diseases. However, the flexible IDRs hinder the use of 3D structure-based drug design methods. Liquid droplets of aggregation-prone proteins with IDRs, which become hydrogels or form amyloid fibrils, are a potential target for drug discovery. In this presentation, I will introduce an experiment-guided protocol for characterizing the design grammar of peptides that can regulate droplet formation and aggregation of fused in sarcoma (FUS) (Sci. Rep. 2021). Then, I will introduce a rational design method to obtain a peptide that can bind an IDR using only protein sequence information (Sci. Rep. 2019; under revision). We applied the method to the disordered disordered domains of a tumor suppressor p53 and demonstrated the regulation of liquid droplet formation and DNA-binding function. The sequence-based design may be useful in targeting IDRs for therapeutic purposes.

    Download PDF (330K)
  • Ichiro Kawahata, Kohji Fukunaga
    Session ID: 2022.1_AG-6
    Published: 2022
    Released on J-STAGE: October 11, 2022
    CONFERENCE PROCEEDINGS FREE ACCESS

    超高齢化社会を迎え、認知症の根本治療薬開発が喫緊の課題である。パーキンソン病とその進行にともなう認知症、およびレビー小体型認知症では、原因タンパク質であるαシヌクレインが細胞間を伝播し、脳内に蓄積する。蓄積したαシヌクレインは凝集体を形成し、レビー小体として病理学的特徴を示す。私たちはこれまでにαシヌクレインの神経細胞取り込みと伝播、凝集体形成にⅢ型脂肪酸結合タンパク質(FABP3)が必須であることを明らかにした。またFABP3は神経毒である1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)によるミトコンドリア機能障害とドパミン神経細胞死にも関与する。FABP3ノックアウトマウスではαシヌクレインの取込みと凝集体形成、MPTPによるミトコンドリア機能低下と神経脱落が認められない。αシヌクレインとFABP3は1:1で結合し、FABP3存在下で凝集体を形成する。またFABP3は長鎖型ドパミンD2(D2L)受容体と結合し、D2L受容体ノックアウトマウスではαシヌクレインの取込みと凝集体形成が認められない。FABP3依存的なαシヌクレイン取込みには細胞膜カベオラ構造とD2L受容体が必要である。そこでαシヌクレイン-FABP3複合体形成を標的としたFABP3阻害薬で処置した結果、初代培養ドパミン神経細胞およびin vivoにおいて、αシヌクレインの取込みと凝集体形成が阻害された。またFABP3阻害薬により、パーキンソン病モデルマウスにおける運動機能と記憶学習機能が回復した。一方、αシヌクレインの取込みにはそのC末部分が必須であることを明らかにした。C末欠損αシヌクレインはドパミン神経細胞に取り込まれない。そこでαシヌクレインC末ペプチドを作製してドパミン神経に処置した結果、αシヌクレインの取込みと凝集体形成が抑制された。またC末ペプチドはαシヌクレインとFABP3の複合体形成を抑制した。さらにαシヌクレイン嗅球投与レビー小体型認知症モデルマウスにおいてC末ペプチドを1ヶ月間経鼻投与処置した結果、記憶学習機能が回復した。これらの結果をもとに、FABPを標的としたレビー小体病の新規創薬戦略について議論し、αシヌクレイノパチーの疾患修飾治療薬の開発状況について紹介する。

    Download PDF (404K)
feedback
Top