抄録
近赤外分光法を利用した微量水溶液の温度測定システムを応用して、褐色脂肪細胞の温度測定を試みた。先ず、顕微鏡下で細胞の培養を維持し、光路長が50 umになる測定用容器を試作した。発熱を誘起させるノルアドレナリンの投与が行えるような装置とし、5 ms毎のスペクトルデータを取得した。そのデータより温度依存性を示す1908 nmの吸収係数を等吸収点補正して求め、温度変化を推定した。温度変化に起因する不規則な変動は認められたが、現段階では細胞の熱産生を捉えられず課題が明らかになった。今後、外乱の影響を極力排除した実験システムおよびデータ解析法を検討し、測定データ数を増やすことが肝要と考える。