日本考古学
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陶磁器データベース・ソリューション
荻野 繁春
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2001 年 8 巻 11 号 p. 107-122

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抄録

論文作成や調査資料の整理・処理に際し,多くのデータをいち早く簡単に処理して計算し,集計表やグラフができればと考えたりする。特に陶磁器を研究対象としている場合,大量のデータを扱う必要があり,旧来の研究方法論を踏襲するだけでは済まなくなってきている。そこで新しい研究方法として,コンピュータを使った情報処理によって迅速なデータ処理を考えてみることにした。
荻野は中世陶磁器データベースを作成している(略杯MCD)。設定した54項目のうち17項目を中心に処理を実施する。重要なのが遺跡項目である。遺跡をどうとらえるかによって遺跡数に違いが出てくる。このデータベースでは「遺跡」「遺跡1」の2つの項目を設定している。
中世陶磁器研究において,どのような処理結果が求められるであろうか。多くの場合,産地別ないしは器種別の出土数や遺跡数を求めることが多い。そこで70種類の出力結果を想定し,コンピュータでどうすればこうした結果が得られるかを考えた。
マッキントッシュを中心に,ウインドウズでも利用できる方法として,アップルスクリプトとVBAによる処理の自動化を考えた。いくつかの方法を考えたが,アップルスクリプトとVBAの連携による処理方法を中心とした。つまり,アップルスクリプトプログラムによってデータベース・ファイルのデータをエクセルに変換した上で,VBVプログラムによってデータを処理し計算結果を出力する。
アップルスクリプトやVBAでプログラムを書くと実行する命令を制御し高度な処理が実現できる上に他のアプリケーションを利用でき,ユーザー・インタフェースをも自作し利用できる。大事なのがGUIの設計である。ここでは2つのGUIを作っている。アップルスクリプトによるものと,VBAによるものである。この2つのユーザー・インタフェースを使い,利用者との対話形式でボタンなどをクリックするという簡単な方法で処理結果が出力されるようにした。
このアプリケーションは誰にでも簡単に使えて考古学研究の時間のロスをなくし,大量の陶磁器データから思うような処理結果が極めて短時間で得られるようになった。

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